baby blue

music / film / miscellaneous

潜水服は蝶の夢を見る




3/1、シネマライズにて。
ELLEの編集長として人生を謳歌していたジャン=ドミニク・ボビーは突然倒れ、身体の自由を失う。そして唯一動く左目の20万回以上の瞬きで、自伝を書き上げた。その自伝の映画化。

観る前から、感動的だと煽っているのは宣伝なんだろうなあと思ってましたが、案の定でした。病に倒れてから、本を書き上げて行く様子が淡々と描かれていて、それがとても良かったと思います。病院での場面に、ところどころ元気だった時の様子が挿入され、突如としてまた病院に切り替わる。その落差が、やっぱり現実はキツいなあと言う感じ。でも、人間の本質と言うか、そういうものってやっぱりそんなに変わらないんですよね。病院のベッドの上でも女性に目が行くし、皮肉だって言うし、ユーモアもちゃんとある人で。最初は死にたがっていた。でも「自分を憐れむのをやめた」彼は、そんな自分の「生」を受け入れた。どんな状況でも、生きていく。そこが、すごい。
それとタイトルの意味が、映画を観てよくわかりました。想像力と記憶で、潜水服を脱ぎ捨てて蝶のように飛び立つ。蝶が飛ぶ場面で思い出したのが、「海を飛ぶ夢」の窓を開けて飛んで行くシーン。両方とも、現実と想像の差が切なかった。
あと音楽と映像も素敵でした。U2とか「大人は判ってくれない」とか。そして常に淡々と進むストーリーと、やわらかい映像の組み合わせが絶妙でした。あと氷河が崩れていくシーンと、最後にそれが巻き戻って行く映像が繰り返し繰り返し続いたのが印象的だった。テーマは重い気がしますが、観たあと悲壮感が漂う映画でなくてよかった。