baby blue

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ルナシー


2/9、浜松東映にて。ヤン・シュヴァンクマイエルはかなり前に「アリス」と「悦楽共犯者」を見たことがあって割と好きだった。今回はエドガー・アラン・ポーマルキ・ド・サド公爵からモチーフを得た「哲学的ホラー」だそうで。エドガー・アラン・ポー、小学生の頃好きだったな。もうほとんど忘れてしまいましたが。
私は結構いろんなものに感情移入してしまう性質で、映画を見た後なんて特に感化されてしまって、例えば「麦の穂をゆらす風」を見た後なんて一生イギリスの音楽なんて聴くものか、位に思ったりして映画館を出ると現実に引き戻されてハッとするんだけど、今回もそんな感じでどっぷり浸かってしまいました。
にしてもあの世界観、やっぱり好きです。あの場所に迷い込んだら一生抜け出せない気がしてくる。一見するとかなり精神的にグロテスクな感じなのですが、よく考えると至極真っ当なテーマだった気がします。ま、その真っ当さもヤン・シュヴァンクマイエルのフィルターがかかると異世界に見えてしまうわけですが。
狂気と正気の境目は一体何処なのか。自信を持って「自分は正常だ」と言い切れるのか?私は言い切れないなあ。この世の中こそ自由や暴力に満ち溢れた狂気の世界に他ならないのかもしれない。誰だって狂気と正気の境目で爪先立ちしているようなものなんじゃないかと思う。と言うか、「正気」と「狂気」だって今私の住んでいる狭い世界でそう言う「名前」が付けられているだけの話であって、何が正しくて何が間違っているかすら、正解は存在しないんだとしみじみ思ったのでした。