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baby blue

music / film / miscellaneous

セントアンナの奇跡

film 感想


感動を煽るような予告ですが、これはそう言った類いの映画ではなかった。観終わって私の心に一番残ったのは、戦争、そして人間の残虐さ、愚かさ。
スパイク・リーらしく黒人の差別もひとつのモチーフではあるけれど、今回はそれよりももっと大きな、人種と国の枠を超えた争い。その愚かさを描きたかったのではないかと思った。

作品としては、長いし中だるみもするし予備知識(イタリアとドイツの関係や、パルチザンファシズム・ドイツの対立など)もある程度必要とするし、展開は読めるし、ファンタジー要素を盛り込んだことで焦点がぼやけてしまった感は否めない。そして映画としていい作品か?と問われると詰め込み過ぎて破綻してる感もあるので素晴らしいとは言い難い。けれど、観て、そして考えるきっかけとしては非常に良いと思う。

劇中に、イタリア、セントアンナの教会での住民虐殺のシーンがある。そのシーンは目を覆いたくなる程むごたらしく悲惨で、慈悲のかけらも見られないものだった。私は、この史実については全く知らなかったし、知らなかった自分が腹立たしくなるほど衝撃的だった。何の罪も無く、何の武器も持たない人々を皆殺しにすると言う残虐さ。こうやって書いている文章ではその残虐さは何一つ伝わって来ないけれど、実際映画のスクリーンでそのシーンを観たときは、心臓がドキドキして、思わず目を背けたくなった。人が撃たれて血を流し、目を開けたまま簡単に死んで行く様に、戦時下ではこれが日常茶飯事なのだ、と思って背筋が寒くなった。残酷過ぎる。けれど、戦争と言うものはこう言うものなのだろう。人ひとりの命、そのひとりの命が失われることによって枝分かれのように人々にもたらされる悲しみ、痛み、苦しみは何の重さも持たない。

テレビ局が作る、頭を使わない軽い映画もいいけれど、こう言う映画こそもっと多くの人に観られるべきではないかと思う。
今日は終戦記念日。戦争について、失われた命に対して、今の日本人はどれほど真剣に考えることができるだろうか。

もしこれからご覧になる方がいらっしゃれば、こちらを先に頭に入れておくことをおすすめします。