baby blue

music / film / miscellaneous

家の鍵



5/6、名演小劇場にて。障害を持って生まれた息子パオロと15年経って初めて会うジャンニ。パオロと共にベルリンの病院へ行き、そしてそこで重い障害を持つ娘の看護をするニコールとの出会いを経て、パオロとジャンニの関係も少しづつ変わっていく。
最初はパオロとどう接していいかわからず戸惑い不安げだったジャンニが、段々とパオロとの距離を縮めていく様子がとてもぐっと来ました。今まで会った事もなかった自分の息子を、父親として愛情を持って接しているのが伝わってきた。勿論障害者の子供を持つ親の苦労なんて私にはわからないし、ましてやその気持ちなんて分かるわけがない。でもすごくリアルだなあと思ったのが、シャーロット・ランプリング演じるニコールの「(娘が)死んでくれれば」と言う言葉。娘の為に苦労ばかりして、他の子供たちは元気なのに、何故うちの子供だけ…。日本では多分こういう考えって公ではタブーとされているような気がするのですが、でも実際こう思って当たり前だと思う。
それとこの作品が日本の良くあるお涙頂戴映画と決定的に違ってリアルなのは、ラストも割とさっくりとこれからの苦労を予感させて終わるところ。一緒に暮らす事になっても、パオロが障害児であることに変わりはないし、これから成長して行く過程で新たな苦労や弊害も出てくるであろう事を決して隠そうとはせず描き切るところがすごいと思った。
父親の在り方や障害を持った子供と言う重いテーマで、決して感動を狙った作品ではないけれど、ジャンニとパオロの絆が段々と強くなっていく様は見ていてやはり感動的でした。ジャンニに「一緒に暮らそう」と言われて、パオロが最初「考えておく」と言ってすぐ「いいよ」と言うシーンは、二人のお互いを想う気持ちが表れていてとても好きです。彼がジャンニを慰めるシーンも、いろんな想いが交錯する中で「僕がいるから」と言うパオロの一言に涙が出ました。二人はきっと前途多難だろうけれど、強い絆で乗り越えてくれる事を信じたいです。
★★★★☆ 4