baby blue

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つぐない


6/21&6/26、TOHOシネマズ浜松にて。
とても良かったです。余りに良かったので、昨日2回めを観に行ってしまいました。上映期間が一週間しかないのがとっても残念です…。
久しぶりに、世界観をどっぷり堪能できる上質な作品を観ました。イギリスの文芸作品の映像化ならではのクラシカルな映像美。完璧でした。
監督は、「プライドと偏見 [DVD]」のジョー・ライト。これが2作目とは思えない。すご過ぎる。時間を巻き戻して見せる手法といい、虚構の織り交ぜ具合といい、全てが絶妙でした。無駄が一切なく、片時も目を離すことが出来ませんでした。戦場での5分近くに及ぶ長回しのシーンは圧巻。海を渡れば母国なのに、いつ帰れるかもわからない、明日の見えない戦場。ダンケルクは本当にこんな感じだったのではないかと錯覚してしまいました。
音楽も重厚感、悲壮感漂う音楽で、タイプライターの音と相まって何かが起こる、そんな雰囲気を醸し出していました。さすが作曲賞です。
俳優陣も総じて素晴らしかったです。13歳のブライオニーを演じたシアーシャ・ローナン。潔癖さが際立っていて、オスカーノミネートも納得。圧倒的な存在感でした。18歳のブライオニーのロモーラ・ガライは、最初ちょっと13歳と違い過ぎじゃ…と思ったんですが、そのうちすっかり違和感もなくなっていました。自分の罪の重さに気付いて葛藤する様子が良かったです。
そして何よりジェームズ・マカヴォイ。素晴らしかったです。繊細で、どこか儚げで、戦場では命の灯火が消えかけている様子に胸が詰まりました。瞳が、とても奇麗なんだけど、でもこの世のどこも見ていない、焦点の定まっていない瞳。観る前は、現代的なイメージしかなく、こう言うイメージが全く沸かなかったんですが、最初に登場したシーンからロビーそのものでした。あと正直キーラ・ナイトレイが私はどうしてもお嬢様に見えないんですが、それを除けば芯の強い様子がとても良かったと思います。あと個人的に嬉しかったのはブレンダ・ブレッシンやジーナ・マッキー、ジェレミー・レニエが出ていたり、他にも観た顔がちらほらあったこと。何気に豪華でした。
少女の犯してしまった取り返しのつかない罪。その嘘と時代に翻弄される人たち。嘘をついてしまった後悔、葛藤…。とにかく全編にわたって物悲しく、どうしようもない切なさが漂っていました。たったひとことから狂ってしまった人生の歯車。一度狂ってしまった歯車は止まることなく回って行く。ロビーが戦場で幻影を見る辺りから、もう涙が止まりませんでした。とても悲しく、また美しい作品でした。
ラストシーンの捉え方は人それぞれだと思いますが、私はそれが「叶わなかった」ものであるからこそ、余計に切なく、どうしようもなく、また尊いものであるように思えました。

何か、薄っぺらい感想しか書けない自分の文章力のなさが悔やまれて仕方がない。それ程、素晴らしい作品でした。
にしてもこれたまたま浜松でやったから観に行ったんだけど、やらなかったら完璧見逃してたなあ…。名古屋でやってた時に観に行く程ではないかなと思ってたんだけど、見逃さなくて良かった。ホントに泣けた。今思いだしても泣けてくる。今年観た中で、今のところ文句無しに一番の作品です。
Trailer