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DEAR WENDY ディア・ウェンディ(かなりネタバレ)




2/16静岡シネギャラリーにて。銃に魅せられた5人の若者。平和主義の名のもとに彼らは集う。
最初から最後まで若さで突っ走った彼ら。「負け犬」であることを拒み、銃によって自信をつけたように見えた。けど、セバスチャンの「怖いから銃を持つんだ」と言うひとことが彼らの現実を確実に言い当てていたと思う。負け犬は自らを負け犬と認めることによって初めてそこからの脱却への一歩を踏み出せるのではないかと思う。現実逃避では結局何も変わらない。銃に心の拠り所を見出し、銃によって彼らは強くなったように見えるけれど、結局はずっと負け犬のまま。とても滑稽であると同時に、銃に依存し切っている彼らを痛々しく感じた。
そして彼らは悲劇的な最期を迎える。もしも彼らなりに心から満足して死んでいけたのだったら、それ以上のことはないと思う。最期、自分の望みどおりにウェンディによって死を授けられたディック。彼の最期の微笑みが印象に残りました。まあ見終わった後何とかならなかったものかとも思ったけれど、やっぱり遅かれ早かれ彼らは銃によって最期を迎えたであろうと思う。そしてきっとそれが彼らの望みだったはず。
とにかくこの映画全体の荒廃した雰囲気がかなり好きです。どうしようもなさや救いようのなさがずっと漂っていたのだけど、その感じがまたたまらなく心地良かった。あとディックが書いた手紙の文面も素敵でした。終末へ向かう彼の覚悟やウェンディと離れ離れになった哀しみ、そして何よりもウェンディへの愛がものすごく伝わって来た。その文面だけでわかる彼のウェンディへの愛のあまりの真っ直ぐさ、純粋さに泣きそうになった。ディックを演じたジェイミー・ベルも良かったです。ディックの神経質さ、繊細さ、ウェンディへの偏愛が痛々しい程伝わってきました。ほんと「痛い」映画でした。いろんな意味で。
そして音楽はゾンビーズ。この映画にぴったり合っていてかなり良かったです。やっぱり音楽って映画にとってものすごく重要だなあと改めて実感。あとは地図とか、あの広場だけで話が進む閉鎖的な感じはドッグヴィルを思い出さずにはいられなかった。
にしてもずっと見たかったのでようやく見れて嬉しかった。この映画に興味をひかれたのは、やはり何と言ってもラース・フォン・トリアーが脚本だということ。私は彼の作品は「奇跡の海」「ドッグヴィル」しか見ていないのですが、あの何ともいえない後味は嫌いではありません。*1とにかく今回のは、彼が監督をした作品よりは格段に観易かった。このコンビの作品、是非また見てみたいです。あ、でももうすぐトリアーが監督のManderlayがあるのでそれも楽しみ。
あとこの作品は一応アメリカが舞台だけれど、個人的にはあんまり銃社会への批判という感じは受けなかった。それよりやっぱり閉鎖的な日常空間の閉塞感とか、うーん、うまく言えないけどやっぱその辺はドッグヴィルと同じ感じを受けました。とにかく見応えがあったし、もう1回じっくり見て見たいです。

★★★★☆ 4

*1:ちなみにかのダンサー・イン・ザ・ダークは公開当時、私の人生においてどん底の時期だった為友人の「落ちてるときは見たらヤバイで」と言う一言により見ておりません。そして今も何となく見れないまま今日に至ってます。