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リバティーン The Libertine (ネタバレ)



5/3、109シネマズにて。1660年代のロンドン。国王チャールズ二世の治世。ジョニー・デップ演じる第二代ロチェスター伯爵、ジョン・ウィルモットの破滅的な人生を描いた作品。
正直見る前はどんなもんかなと思っていたのですが、素晴らしかったです。傍から見れば粗暴で支離滅裂なウィルモットの言動や行動も、全て孤独の裏返しに見えました。そのエキセントリックな振る舞いで人々の注目を集める事で、何とか孤独から逃げようとしているような気さえした。プロローグで語られる「どうか私を好きにならないでくれ」と言う台詞の裏に凄まじいまでの彼の孤独を感じた。彼が唯一心から愛したであろう女優エリザベス・バリーと添い遂げられれば、彼の人生はきっと全く違ったものになっていたはず。そして多分、それが彼の唯一の望みであったのだと思います。梅毒によって見る影もなくなり、一人椅子に座って泣いていたシーンがとても痛々しく、その悲しみや後悔や自己嫌悪、それがスクリーンから伝わってきてやり切れない気持ちになりました。最後にマイケル・ナイマンの音楽が流れてきたら、やっぱりちょっと涙が出ました。満たされる事なく迎えた最期が余りにも切なかった。
あと、とにかくジョニー・デップが滅茶苦茶良いです。彼の作品の中でこれがベストになりそうな感じです。ウィルモットの孤独や狂気や色気を凄まじいまでに体現してました。梅毒にかかってからの演技は怖いくらいの迫力。あと、やっぱりジョン・マルコヴィッチサマンサ・モートンと脇を固める俳優陣が素敵でした。サマンサ・モートン今まであんまり綺麗だと思わなかったんですけど、凛とした雰囲気がとても美しかったです。
中々感想を述べづらい映画ではあるのですが、漂う退廃感、荒涼感、倦怠感はかなり好みだったし、プロローグとエピローグがとても良かった。特にエピローグは、ウィルモットの寂しさにほんとに胸が痛みました。もう何百年も前にこの世から去った人であるのに、彼の破滅的な、けれども真摯な人生に魅了されずにはいられないのです。機会があれば是非もう1回見たい作品です。
★★★★☆ 4.5